インド・デリーから140バーツ(300円程度)の列車に揺られること3時間。アーグラという街にやってきた。
この街に来た理由はただひとつ。インドといえばのやーつ、そう、タージマハル!
The Taj Mahal
タージマハル、下から見るか?横から見るか?

夕方にデリーを出発した電車は、すっかり日も落ちた夜8時頃にアーグラの駅に車体を納めた。

旅人あるあるだと思うが、3時間程度で行ける場所はもはや近場。100~200㎞なら余裕で移動できるなー、とか思ってしまう。
ということで、たいした疲れも蓄積させることなく、薄暗いアーグラの街にバックパックひとつで元気に飛び出る。

しかし、ここはインド。毎度の如くの客引き、モテモテ状態。
いつもならスルーするところだが、今回はそうはいかない。今日の宿を探さなければならないからだ…。
そのため、審美眼だけを頼りに、ほりの深い顔をいくつも観察、一番人の良さそうなおっちゃんと交渉することにした。
ものの1分。400ルピー(700円)以下の宿をいくつか回ってもらうことで交渉は成立。タクシー料金は格安30ルピー(50円)。いやいや、なかなか人が良いじゃないか、おっちゃん。
1軒目。満室。
2軒目。1000ルピー。
3軒目。800ルピー。
雲行きはとっくの昔に怪しい。
4軒目。1500ルピー。
5軒目。満室。
6軒目。700ルピー。
おい、おっちゃん!インド来てからこんなことばっかりなんですが…。いい加減良い意味で裏切ってこいよ、とか思う!
とはいえ、おっちゃん曰く。

と。
真意のほどは不明だが、とにもかくにも、400ルピーで泊まれる宿はなさそうだとのこと。
うん、悩む。
最初は「また騙しやがったな」という、いままでのインド人と以下同文のレッテルをプレゼントしてやったおっちゃんだったのだが、いくらでも宿に連れて行ってくれるし、最初に提示した料金からつり上げたりもしない。
「安いところがなくてすまない。かわりに君が満足するまで回ったらいい。」とか言ってくれる。
首を縦に振るという人間の基本動作を忘れた、この僕にだ。
結果…。なんとか粘って500ルピー(800円)になった宿で今日は就寝。シングルだしWIFI飛んでるしシャワーあるし、まあ良しとしよう。おっちゃんとの長い夜はこれにて幕切れ。
しかし、1時間以上連れまわして50円しか手に入れていないおっちゃん。小学生のお手伝いではないのだから。当然、明日も案内したいと願い出てくる。
ちょっと、申し訳なさもあったので、価格交渉。
僕が見たいのはタージマハルのみなので、そのことを伝える。今は改修工事中のため後ろからも見たほうがいいと言われ「タージマハル・後ろから見るタージマハル・ジャイプルに向かうための鉄道駅」のコースで半日、300ルピーでお願いすることにした。
こうしてアーグラの初日は、お金のないバックパッカーにとって、唯一無駄遣いできる”時間”を、その言葉通り、ふんだんに無駄遣いして終わっていった。
ということで次の日。

のんびり昼前に起きだし、腹ごしらえ。
そうこうしているうちにおっちゃんが宿にやってきていよいよ出発!
いざ、タージマハルへ!
タクシーを降り、道を進むこと5分。見えてきたチケット売り場でチケット・水・シューズカバーをもらう。
このとき心優しいインド人が助けてくれる。そして彼らはガイドもセットになっているからね、と教えてくれる。シンプルに嘘なので気を付けましょう。あとでまあまあのチップ請求されたくなければね…。


そのまま荷物検査を終え、ついに!!!ついに!!!
これがあのタージマハルだ!

はい。ドセンターが工事中と聞いていたけど、本当にドセンター。聞いていなかったらメンタルやられてたろうな。
しかし、タージマハルのいいところ。
下から見ても、横から見てもタージマハル!


正面がダメダメという大問題はあったのだけれど…。
うん。タージマハルすごかった!普通に圧倒された。単純にきれい。美しい。
※感想の表現の幅の狭さには自分自身愕然としているので。深く詮索はしないでほしい。
ということで次はバックサイドから見たタージマハル。のはずが、いろいろ言ってくるぞ、おっちゃん。

うん、行かね。

うん、行かね。
苦虫をつぶしたような顔のおっちゃん。そうして、「これは俺のビジネスなんだ、格安で案内しているんだから付き合ってくれ!」と言ってくる。おっちゃんによるとひとり観光客を連れて行けば、一律500ルピーをもらえるらしい。
ほうほう、なるほど。
そういったビジネスモデルがあるのか。
最初からそう言えよ。そういうことなら、付き合ってあげてもいい。しかし列車の出発まであまり時間はない。
そこでバッグサイドタージマハルを見た後なら、付き合ってあげると答え、渋々オーケー。
ということで、いざタージマハルの後ろに。
しかし…超斜め後ろから超遠目アングル。(もはや写真すら撮っとらん。)
いや、これ後ろじゃねえから。
昨日見せてくれた写真と違うじゃないか、おっちゃん!とここにきて本気で怒る。
時間かけたくなくて、楽しただろうと!

いや、知らね、その事情。
ただ、おっちゃん。昨日真後ろからのアングルの写真見せながら、これがバックサイドからの景色だと言っただろう、と再び諭す。その上でここに連れてかれたら、文句言ってくれっていってるようなもんだと。
ここは当然粘り勝ちし、ついにバックサイドへ。


うん、これこれ!これが見たかったのだ。
ということで、結局おっちゃんのビジネスに付き合う時間はなくなってしまった。
おっちゃん、残念そうだったが、最後はぐちぐちと文句は言わず駅に連れて行ってくれた。

うん、その気持ちは十分に伝わってきたぞ、おっちゃん。
ということで僕には珍しくチップを多めに渡し、おっちゃんとバイバイ。間違いなく悪い人ではなかったな。